柴田勝家「クロニスタ 戦争人類学者」、ハヤカワ文庫JA、2016

「ぼくは、軍人なんだ。そして、学者でもあるんだよ」 南米のとある小さな村に行ったとき、一人の男の子と出会った。その子だけが他の子と違って、民族衣装を着ていた。 「いや、ぼくは人を殺すために軍人になったんじゃないんだ。人を救うために、平和をも…

沼正三『家畜人ヤプー 第1巻』幻冬舎アウトロー文庫、1999

2000年後の世界、それは日本人が、家畜、になっている世界。 いや、それは少し不正確だろう。より正確には、黄色人がすべて家畜とみなされ、しかし、黄色人の中では日本人のみが生き残っている(日本人以外は絶滅している)が故に、日本人のみが家畜になって…

Project Itoh 『屍者の帝国』

「まず、わたしの仕事から説明せねばなるまい」 「必要なのは、何をおいてもまず、屍体だ」 19世紀のロンドン。 ヴィクトリア女王の下で繁栄を極めている大英帝国の、ある狭い一室で、わたしは、親友を生き返らせた。 人間は死ぬと21グラム軽くなる。それは…

伊藤計劃・円城塔『屍者の帝国』(河出文庫)

ぼく、という意識。 あなた、という意識。 それはいったい何であろうか。 それは現実なのか、それとも夢なのか。 いや、そもそもとして現実とはいったい何なのか。 ぼくは世界から遮断された狭いベッドの上で、一人たたずむ。 と、夜、就寝前の読書をしてい…

法条遥『忘却のレーテ』(新潮文庫nex)

わたしの今までの物語を、忘れてしまう物語。 昨日「おやすみ」と言った人にも、 今日、目覚めれば「はじめまして」。 大学生の唯は両親を亡くした。それも、つい最近のこと。 父が役員を務め、母が寿退社した「オリンポス」という 製薬会社での式典に二人が…

辻村深月『サクラ咲く』

底抜けに明るすぎました。 小学生や中学生が読めばわりと楽しめるのかもしれませんが、曲がりなりにもそこを経験した者としては「つまらない」が正直な感想でした。(進研ゼミの中学生向けに書かれたから、「学校ってこんなにも楽しいものなんですよ」って書…

さて、最初に...

かつて、伊藤計劃さんは自身のブログでこう書いた。 「これを読んでくれている人を映画館へ誘導すること。それがこのコンテンツの目的だ。ぼくのなけなしのボキャブラリーを総動員して、その映画についての情報を修飾しまくり、映画館へいってもらう。僕の好…